トロポニンは心筋細胞の収縮装置を構成する蛋白質で、心筋が虚血や壊死により障害されると血中へ漏出する。急性心筋梗塞を疑うような胸痛を訴える患者では、心筋障害を検出する中心的な血液マーカーとして測定される。近年は高感度トロポニンが普及し、従来法では検出しにくかった低濃度域の変化を早期に捉えられるようになった。高値は心筋梗塞を強く示唆するが、心不全、心筋炎、腎機能低下、敗血症などでも上昇するため、単回値だけで判断しない。診断では、時間経過による上昇・下降、胸痛の性状、心電図変化、画像所見を統合して評価する。つまり、トロポニンは「心筋梗塞そのもの」ではなく、「心筋が傷害された事実」を示す検査である。
https://youtu.be/ht3OSdfzbzA?si=VyEMr5kzciYdlHzK
TnT:トロポニンT
トロポミオシンに結合する蛋白質で、トロポニン複合体をアクチン線維上に固定する役割を持つ。心筋障害時には心筋型トロポニンTが血中へ漏出し、検査項目 cTnT / hs-cTnT として測定される。
TnI:トロポニンI
アクチンとミオシンの結合を抑える蛋白質で、心筋が弛緩している状態では収縮を抑制する。Ca²⁺がTnCに結合すると抑制が解除され、収縮が可能になる。心筋型トロポニンIは cTnI / hs-cTnI として測定される。
TnC:トロポニンC
Ca²⁺と結合する蛋白質で、筋収縮開始のセンサーとして働く。Ca²⁺がTnCに結合するとトロポニン複合体の構造が変化し、トロポミオシンの位置がずれて、アクチン上のミオシン結合部位が露出する。TnCは心筋特異性が低いため、通常の心筋障害マーカーとしては用いられない。