慢性炎症は、感染・組織障害・代謝異常・自己免疫などの刺激が長期間持続し、炎症反応が収束せずに持続する状態である。急性炎症と異なり、マクロファージやリンパ球が主体となり、炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-αなど)が低〜中等度で持続的に産生される。この状態では組織修復と損傷が並行し、線維化や組織再構築が進行する。結果として臓器機能が徐々に低下し、動脈硬化、糖尿病、慢性腎臓病、関節リウマチなど多くの慢性疾患の基盤病態となる。
慢性炎症ループ:各ステップの説明
① 持続的な刺激
慢性炎症の起点は、炎症を終わらせない刺激である。代表例は、持続感染、自己抗原、代謝異常、肥満、高血糖、脂質異常、喫煙、老化、組織障害などである。これらが長期間存在すると、免疫系は「異常が続いている」と認識し、炎症反応を止められなくなる。
② 自然免疫の持続活性化
マクロファージや樹状細胞が刺激を認識し、NF-κBなどの炎症経路が活性化する。その結果、IL-1β、IL-6、TNF-αなどの炎症性サイトカインが持続的に産生される。急性炎症のような一過性反応ではなく、低〜中等度の炎症シグナルが長く続く点が特徴である。
③ 免疫細胞の再動員ループ
サイトカインやケモカインにより、好中球、単球、マクロファージ、Tリンパ球、Bリンパ球などが組織へ継続的に動員される。血管内皮では接着分子の発現が高まり、免疫細胞が組織へ入りやすくなる。動員された細胞がさらに炎症性物質を放出し、炎症が自己増幅する。
④ 組織障害と修復の反復
活性酸素、プロテアーゼ、炎症性サイトカインにより、細胞外基質や実質細胞が傷害される。一方で、組織は損傷を修復しようとして線維芽細胞や血管新生を動員する。しかし刺激が残るため、修復が完了する前に再び障害が起こる。結果として「壊す」と「直す」が同時に進む不安定な状態になる。
⑤ 線維化と臓器機能の低下
炎症と修復が反復すると、TGF-β、PDGF、IL-13などにより線維芽細胞が活性化し、コラーゲンやフィブロネクチンなどの細胞外基質が過剰に沈着する。これが線維化である。線維化が進むと組織は硬くなり、肺ではガス交換低下、肝臓では肝硬変、腎臓ではろ過機能低下、心臓では拡張障害につながる。
⑥ 再び刺激となりループを維持
障害組織や壊死細胞からDAMPsが放出される。DAMPsは免疫系にとって「組織が壊れている」という危険信号であり、マクロファージなどを再刺激する。これにより、再びサイトカイン産生と免疫細胞動員が起こり、①〜⑤の流れが繰り返される。慢性炎症の本質は、この負の連鎖が止まらない点にある。