血沈(赤血球沈降速度、ESR)
血沈(赤血球沈降速度、ESR)は、血液中の赤血球が一定時間内に沈降する速度を測定する検査で、炎症や感染、膠原病などで高値を示す。赤血球が沈みやすくなる要因には、フィブリノーゲンや免疫グロブリンの増加などがある。
血沈(赤血球沈降速度、ESR:Erythrocyte Sedimentation Rate)は、抗凝固処理した全血を縦長の管に静置し、一定時間(通常1時間)でどれだけ赤血球が沈降するかを測定する検査である。主に炎症の有無や程度を反映する指標として用いられる。
この検査は、赤血球同士が互いにくっつきあって沈みやすくなる「連銭形成(ルーロー形成)」の性質を利用している。通常、赤血球は互いに反発しあって沈降しにくいが、体内で炎症や組織破壊が生じると、血漿中のフィブリノーゲンや免疫グロブリン(IgG、IgMなど)が増加し、赤血球表面の電荷を中和して凝集を促進する。これにより赤血球は重く大きな塊となって早く沈むため、血沈値が高くなる。
ESRの上昇は非特異的な炎症反応であり、感染症、膠原病(リウマチ、SLEなど)、悪性腫瘍、結核、慢性腎疾患など多様な病態でみられる。一方で、早期の炎症では変化が乏しいこともあり、CRP(C反応性蛋白)と併用して評価されることが多い。
なお、血沈値は性別や年齢、貧血、赤血球形態、血漿タンパク質濃度にも影響を受ける。特に貧血では赤血球の数が少なくなり沈降しやすくなるため、ESRは高く出る傾向がある。また、赤血球が異常な形状(鎌状赤血球など)の場合は沈降しにくく、低値を示すことがある。
血沈は簡便で安価な検査であり、病態の経過観察や治療効果の指標としても利用されている。ただし、特異性に乏しく、単独では診断的価値が低いため、他の臨床所見や検査とあわせて解釈する必要がある。
赤血球沈降速度(血沈、ESR)が「沈む仕組み」は、重力と赤血球の凝集性(連銭形成)、そして血漿の成分によって説明されます。以下に段階的に解説します。
■ 1. 赤血球の性質
通常、赤血球はマイナスの電荷を帯びており、互いに反発しあってバラバラに浮遊しています。この状態では、沈降は遅く進みます。
■ 2. 炎症時の血漿成分の変化
炎症や組織障害があると、血漿中のフィブリノーゲンや免疫グロブリン(IgG、IgM)などの高分子タンパク質が増加します。これにより:
赤血球表面の電荷が中和される
- 赤血球が「連銭形成(ルーロー形成)」と呼ばれるコイン状の集合体を作る
■ 3. 凝集した赤血球は速く沈む
連銭形成によってできた赤血球の集合体は、単独の赤血球よりも大きくて重く、沈降速度が速くなります。
小さな粒子(単一赤血球)はゆっくり沈む
- 大きな粒子(連銭)になると重力による沈降が加速される
■ 4. 測定原理
抗凝固処理された全血を縦のチューブに静置すると、
時間とともに赤血球が底に沈む
上部に透明な血漿層が形成される
通常は1時間後に何mmの高さの血漿層ができたかを読み取る(mm/hr)
血沈(赤血球沈降速度;ESR)は、体内での炎症や組織破壊の存在を反映する非特異的な炎症マーカーである。赤血球がどれだけ早く沈降するかを測定し、フィブリノーゲンや免疫グロブリンなどの増加によって値が上昇する。主な臨床意義は、炎症性疾患の存在確認、病態の経過観察、治療効果の評価である。特に、**慢性関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性筋炎、結核、悪性腫瘍、感染症(細菌性)**などで高値を示す。一方、ポリシチミアや鎌状赤血球症では低値を示す。診断においてはCRPと併用することで補完的な評価が可能である。



