血清蛋白分画電気泳動(SPEP)の基本
血清蛋白分画電気泳動は、電場中で蛋白を電荷と大きさに応じてアルブミン、α1、α2、β、γに分離し、濃度比から炎症、免疫異常、肝疾患、多発性骨髄腫などの診断指標を提供する解析法。寒天ゲル上で走査後、染色像をデンシトメトリー測定し各分画の面積比を算定し、免疫グロブリン増殖などのパターン変化を可視化する。
蛋白分画検査(Serum Protein Electrophoresis;SPE)は、血清タンパクを電気泳動で荷電・分子量差に基づき分離し、アルブミン・α₁・α₂・β・γの5分画に定量化する検査である。寒天ゲルやアセテート膜を支持体とし、泳動後に染色してデンシトメトリーでピーク面積を測定、総タンパク値と組み合わせて各分画の絶対量を算出する。アルブミンは肝合成能と腎漏出の指標、α₁・α₂は急性相反応、βは輸送タンパク/補体、γは免疫グロブリン量を反映するため、パターン解析で多彩な病態を推定できる。肝硬変ではアルブミン低下とβ–γブリッジ、ネフローゼ症候群ではα₂高峰とアルブミン欠損、急性炎症ではα₁・α₂上昇、多発性骨髄腫ではγ領域に鋭い単クローン性 M spike が出現する。近年は毛細管電気泳動が主流となり、高分解能解析を5分以内で自動処理し、CV 2%前後の再現性を実現している。検体は溶血・乳び・フィブリノーゲン混入を避け、内部・外部精度管理(EQA)で品質を担保する。異常所見が出た場合は免疫固定電気泳動、フリーライトチェーン比、Ig 定量、Bence-Jones 蛋白尿検査を追加し、M 蛋白量の g/dL 推移を臨床症状・骨病変・腎障害と対比評価することで診断とモニタリング精度が向上する。本検査は比率評価であるため脱水や浮腫など総タンパク変動が大きい症例ではピーク形状が正常でも実量低下のことがあり、各分画内構成タンパクの比濁法定量を併用すると解釈が確実になる。報告書には % と g/dL を併記し Alb/Glob 比や M 蛋白比率を示すのが望ましい。検体処理は採血後2時間以内の遠心、室温8時間以内または −20 ℃で1週間安定とされる。毛細管法では高脂血症サンプルによる負ピーク、洗浄不良によるゴーストピークが起こるため、ランプチェックとキャリブレーションが不可欠である。
血清蛋白分画電気泳動(SPEP)の基本
走行順序:陽極側(アルブミン)→α₁→α₂→β→陰極側(γ)
読影のコツ:
アルブミン高峰の高さと鋭さ
各グロブリン分画の相対面積(%)と形状
β‐γ間の連続性(ブリッジング)や、鋭い単峰(M spike)の有無
定量値(Alb/Glob比、M蛋白濃度など)と合わせて解釈
1. 正常例
| 所見 | 説明 |
|---|---|
| 病態 | 生理的な血清タンパク濃度(総タンパク 6.4–8.3 g/dL) |
| 電気泳動図 | - アルブミン:全体の ~55–65 % で最も高く鋭い - α₁/α₂:小峰(α₁ 2–4 %、α₂ 8–12 %) - β:中等度の幅広い峰(~10 %) - γ:穏やかで広がりのある弧(~12 %) |
| 読み取り | 5峰がそれぞれ独立して分離し、ベースラインがフラットなら正常と判定 |
| 所見 | 説明 |
|---|---|
| 病態 | 肝合成能低下に伴うアルブミン減少と、門脈圧亢進に伴うポリクローナル Ig 増加(高 γ 分画) |
| 電気泳動図 | - アルブミン:高さ低下 - β‐γ ブリッジ:γ分画が広くなり β と連続し“肩”を形成 |
| 読み取り | アルブミン低下+β峰後半からγにかけて滑らかな一体化。β‐γ間が明瞭に分離しない場合は肝硬変を強く示唆 |
| 所見 | 説明 |
|---|---|
| 病態 | 単クローン性形質細胞が過剰 Ig(M蛋白)を分泌 |
| 電気泳動図 | - M spike:βまたはγ領域に鋭く非常に高い単一峰(幅狭い) - 周囲のポリクローナル γ は抑制されベースラインに近づく |
| 読み取り | γ(またはβ)に「針状」のピークがあり、高さがアルブミンの 30 % 以上なら M蛋白陽性。Igs 型決定は免疫固定で確認 |
解析のヒント
アルブミン低下比率=Alb % / 総タンパクに着目すると肝硬変・ネフローゼの鑑別が容易
Alb/Glob 比< 1.0 なら肝疾患・腎漏出・免疫増殖性疾患を疑う
M spike/γ面積 比> 30 % は骨髄腫寄り、< 10 % なら MGUS や反応性高 γ を検討
- β‐γ ブリッジは肝硬変以外では稀(重度炎症や自己免疫性肝炎で軽度)





